法 話
父母への報恩
今月の聖語は上野殿御返事の「父母の恩のおもき事は大海のごとし」というお言葉です。
日蓮聖人の御遺文にはよく「恩」という言葉がでてきます。これは日蓮聖人が「恩」をとても大事にしていたからです。
恩とは「めぐみ」「いくつしみ」、あるものが他に生命を与えたり、その発展を助ける事であり、人はその恩を受けたり施したりして、その恩と密接にかかわってきました。そして日蓮聖人はその恩の中でも特に大切にしている四つの恩があります。その中の一つが父母に対する恩です。
各ご家庭にご先祖さまをはじめ、父母やご家族の精霊を迎える盆の季節が間もなくやってまいります。殊に新盆を迎えられる方から、「生前、もっと色々なことをしてあげたかったですよ。あまり親孝行ができず、それが心残りです」との言葉をよくお聞きします。
「親孝行したいときに親はなし」との言葉もありますが、では父母への孝養に篤かった日蓮大聖人はどの様におっしゃられているでしょうか?
十王讃歎抄にて「孝養に三種あり。衣食を施すを下品とし、父母の意に違わざるを中品とし、功徳を回向するを上品とす」とおっしゃられています。
生前、父母の生活の面倒などを見ることよりも、父母を安心させる生き方をする事が父母への孝養である。しかしもっとも重要なことは、父母が亡くなった後に丁寧に回向を捧げることが最上の親への孝養であるとおっしゃられています。
また、今月の聖語の一節の後には、私たちに命を与え育ててくれた父母へ生きている間に返せる恩は大海の中の1雫ほどである。父母亡き後に回向を捧げ続けることが本当の報恩であるとおっしゃられています。
先の話にあった、「親孝行したいときに親はなし」ではなく、本当の親孝行とは父母を亡くした後いかに供養・回向を行うかであるのです。
亡き精霊へ回向を捧げても、捧げずとも精霊からは何も聞くことはできません。しかし、何かを行って「ありがとう」の言葉を聞くから行うのではなく、本当の報恩とは何も言われず反応も無いけれども、自分の感謝の想いを行動にして行っていく事ではないでしょうか。
まだ、遅くはありません!本当の父母への、志す精霊への報恩の孝養を行っていきましょう。